広瀬川の写真をはじめ、「ゴールデンスランバー」の舞台となった仙台の現場検証MAPも載っています!
「ハリウッド映画の主人公なら自分で潔白を証明して真犯人を突き出すんでしょうけどね・・・そこは“何か大きなもの”が途轍もなく怖いという僕自身の気分が反映されているとは思う。“俄か社会派”みたいなことを言っちゃうと、例えばワーキング・プアの問題とかも、誰が悪で、どうすればいいのか、僕にはわからない。テロの恐怖と言っても個々のテロリストには家族もいて、誰が怖くて悪いのか、悪いかどうかもわからないから余計怖いんです。そして敵が大きすぎて見えないなら逃げるのも一つの選択肢だろうと。無謀でも何でも逃げて、ひっそり家族と暮して行ければいいや、それもありだよねって物語を、自分でもどうしようもなく書きたかった」
昔の彼女や大学時代のサークル仲間といった周りの人との絆が大きな役割を果す点について・・・
「彼らは大学卒業後、ずっとつながっていたわけではないのに、主人公が犯人ではないと信じます。僕は実生活でも一番大事なのは、人とのつながり、信頼とかだと思うんですよね。だから、小説の中でそういったものが活躍してほしくて」
ロックが好きな伊坂さんが別格に好きなのは斉藤和義さんとTHE ピーズだそうで、そのTHE ピーズの名曲「実験四号」をモチーフに山下敦弘監督が短編映画を撮り、伊坂さんが短編小説を書かれるそうです。2008年前半に発売予定。
いつからかは不明ですが徳間書店のPR誌「本とも」に『あるキング』というタイトルで野球選手の半生を描く小説を連載予定だそうです。
「これまでの作品は、自分は面白いけど、他の人は面白いとは思わないかもしれない、そういうのがいいんだ、と思っていたんです。 好きな人は好きだけど、嫌いな人は嫌い、というか、スロウカーブみたいな。でも、今回は直球を投げたつもりです。 スピードがあるかどうかはわかりませんが、直球も投げられることを証明したくて(笑)。」
「『アヒルと鴨のコインロッカー』しかり、『陽気なギャングが地球を回す』しかり、連作集『チルドレン』の第一話「バンク」しかり、冒頭に強盗、特に銀行強盗のシーンを描くことが僕の作品では多いんですよね。これは、それしか書けない、ということもあるんですけど(笑)、現実から微妙に浮遊している“掴み”を考えると、やっぱり急に暴力的なことが起こるのが、フィクションならではの期待感を煽るはずだと考えて、それで結局、思いつくのが強盗なんですよ。〜中略〜 僕の場合は、暴力的で且つ現実的な光景を考えたときに、殺人か強盗かの二択になってしまうことが多いですね。とにかく冒頭に“動き”のある場面、物語が転がりだす場面を持ってこようとしています。ただ、「暴力的」とは言っても、僕が意識しているのは、そういう暴力的な要素を持ち込む反面、でもこの先それを深刻に描いていく作風ではないんだよ、というのも伝えたいってことなんですよね。だから、書店は襲うけどボブ・ディランを歌うとか、銀行強盗しならがら演説をぶつとか、“暴力的だけど、意外とユーモアがありますよ”と仄めかせればいいなあ、と思っています。」
「アヒルと鴨のコインロッカー」「死神の精度」「重力ピエロ」「グラスホッパー」などの書き出しについても10pにわたって書かれています。
「僕は、いわゆるいい話や和む話とか、人を癒す話って、よく分からないし自分が書ける気もしない。そういうことを目的にはしていないのですが、僕自身がすごくおもしろい映画を見たり小説を読んだりしたときに、明日も頑張るぞっていう気になるんです。自分の小説も、そういうものになれたらいいなと思っています。「僕はあの世界を見てきたから大丈夫」と思えるようなフィクションの世界を作りたいんです。自分の小説でみんなの人生が変わってほしいとは思わないけど、触媒になって何かの化学反応が起こればいい。おもしろかった、だけで終わる小説がいちばんつまらない。おもしろくて、何か次の行動につながるようなものを書き続けたいと思っています。」
映画「アヒルと鴨のコインロッカー」のロケ地、宮城県美術館や、『重力ピエロ』『フィッシュストーリー』の装丁にも使われている三谷龍二さんの作品が常設されているギャラリーなど、伊坂さんのお薦めスポットが紹介されています。
『エドウィン・マルハウス あるアメリカ作家の生と死』について。
「盛岡の共同温泉に通っている時、休憩所で読みました。歪で怪しげな物語にのめりこみ、後半の物語の展開にぞっとさせられたものの、温泉に来ている周囲の、おじさんやおばさんのくつろぐ姿に、ほっとさせられた記憶があります。」
「『アヒルと鴨のコインロッカー』は本だと自分のなんでわからないんですけど、映画だと人の作品なので客観的に観れて。すごくいいですよね。あれは濱田さんにしかできないですよ。本を書いてたときは椎名は僕自身なんです。一人称を“僕”で書いてるし、仙台に来たって設定も。でも濱田さんのほうが僕よりおもしろい(笑)。文庫にする作業で本を直してたら、濱田さんに引きずられていくってくらいの強烈なイメージがありました。」
高校時代に読みふけっていた島田荘司作品を読み返して
「大人になって読んでみると、意外とつまらなかったりする本もあるけど、島田さんの作品はまったく古くない。とくに『北の夕鶴2/3の殺人』は傑作でした。いわゆる密室殺人なんだけど、トリックが絶妙。ギリギリまで引っ張って、最後の数枚でやっと謎が解き明かされるんです。あれはすごい手法。しかも全体的にコンパクトにまとまっていてムダがない。その力量に感心してしまいます。こんなにおもしろい本があるなら僕が書かなくてもと、ヘコむけど(笑)、読者としてはぜひ読んでほしい1冊ですね」
―脚本について
「他の作品とかでは僕の本を映像にする時に、いろいろ足されることが多いんですよね。でも中村さんが出してきたのは、僕のをまずシンプルに再現しつつ、ちょっと引いて、一番大事なものが残ってる感じがして。で、あちこちで言ってますけど、映画のモノローグが僕はすごい苦手なんですよ。説明っぽいし、それは小説的な技巧の気がしちゃって。それで僕の小説は、自分がすごく気に入ってるモノローグで終わるんですけど、映画化する時に、絶対それ最後モノローグでぶつけてくるだろうなと思って。その時に、『これを外して下さい』って言うのヤだなあってずーっと思ってたら、最初っからそれがなかったんで。あ、この脚本書いた人すごいと思って。ただ、トリックの部分は最初、脚本読んでもよくわかんなくて(笑)。どうなってんのかなって、難しくって(笑)」
映画「アヒルと鴨のコインロッカー」についてのエッセイ。
―印象に残っているシーンは?
『最後に瑛太くんが濱田くんを見送るシーンがあって。「じゃあ、また」と言う濱田くんに対して、瑛太くんが「またっていつだよ」と言うんです。原作を書いていた時に思っていた感情が、そのまま絵に表れているんです。2度と会えないとわかっているのに言ってしまう・・・感動的で1番好きです。』
“そうだ!旅に出よう!”という特集で「アヒルと鴨のコインロッカー」のロケ地についても掲載されいます。
―以前、作家として映像には負けたくない、ともおっしゃっていましたが。
「僕の書く小説のほうが面白くあってほしいけれど、映画化への好奇心はある。ただ、この作品は観客として本当に好きな映画なので、関われてハッピーだと思い、調子にのってこうして取材を受けてます(笑)。」
「僕は基本的に、嫌いな映画の作品ってないんです。どんな映画でも、それぞれ違う物差しをあてて楽しむというか、自分の尺度に合致していないからダメ、という見方はしないんです。ただ、今回の「アヒルと鴨のコインロッカー」はそんな基準を飛び越えて、純粋に楽しめた作品でした。たとえば僕が、これまでに観た邦画ベスト10を挙げるなら、そこに入ってくるくらい好きな作品です。」
中村監督が伊坂さんの別の作品も監督されるそうです。「ラッシュライフ」?
新婚(27歳)からデビュー3年目ぐらいまで住んでいた部屋の間取りが紹介されています。
「今回は、初めて僕の作品を読む人のためにショーケース的な作品にしたいと思っていました。それは良い意味でも悪い意味でもできたと思います。不思議な設定と、楽しい日常の「家族もの」が、後半になると穏やかでなくなり、前半の伏線が後半で生きる、という僕自身の好きなパターンができたのはうれしいんですが、初めて僕の小説を読む人のことも考えたので、どこか平均的な、読んだ後に物足りなさが残るものになってしまったかな、という気もしているんです。」
全36P
『「俺たちは奇跡を起こすんだ」とは、この本に出てくる台詞だ。自分で書いておいて言うのも何だけれど、これだけを抜き出すと、少し恥ずかしい台詞だと思う。良識と羞恥心のある大人は、これを真顔で口にしてはいけない、そんな気がする。ただ、僕はこの小説の中で、こういう台詞を吐いても、あまり恥ずかしくならない、むしろ愉快な気持ちになるような人間を作りたかった。厳密に言うと、気づくと、作っていた。』
斉藤和義さんのアルバム『紅盤』の中に伊坂さんが書き下ろした『アイネクライネ』を基に斉藤さんが作った曲が収録されています。
「僕は『小説家は小説だけ書くべきだ』って気持ちが強くて・・・。今回も最初、斉藤さんから作詞の依頼をいただいた時、すごく嬉しかったんだけど、妻に話したら即座に『やらないよね?』って言われちゃいまして(笑)。それは『あなたは作詞は素人なんだから、調子に乗るなよ』ってことで、ある意味とても正しいんだと思うんですけど、その時は、『ええ?』と思いました(笑)。それで、『本業の小説なら書けます』ってことを改めてお伝えして、今回の形になって。」
「フィクションのよさは答えがないことだと思っている。答えのないものが誰かの役に立ってほしい。僕は他愛ないことを書き、それを誰かが笑って元気になって『明日も会社に行こうかな』と思ってくれたりしたらうれしいですね」
質問@2006年に読んで印象に残った本
『どう考えてみても、「21世紀版『宮本から君へ』」としか思えませんが、それを含めて、素晴らしいと思います。昨年一番熱くなりました。』
- 「ボーイズ・オン・ザ・ラン」
『小川さんの新刊を待っています。』
発行部数が掲載されています。
「陽気なギャングが地球を回す」 12万部
「重力ピエロ」 9.2万部
「アヒルと鴨のコインロッカー」 10万部
「オーデュボンの祈り」文庫版 21.3万部
「ラッシュライフ」文庫版 23.4万部
「明確な答えはないのですが、爆発的に売れることや、できるだけ多くの人に読まれることを目指していないのはたしかです。僕はただ、これからもずっと小説を書き続けていきたい。それを可能にする程度の売れ方はしてほしいと思っています」